詩:期外収縮

‪ありふれた暴力とふり分けて‬

ありふれた私と紛れ込ませて

それはすぐ、この街に見えなくなって

探し出すのに、随分と苦労することになる

わたしが、わたしを取り戻す為には、この世界は広大で、そしてわたしは微か、ということにしてしまった


詩が文脈の芸術であるならば、脈絡なく訪れる体現、それが死


「殴られたらまだ幾らか良かった」と語った言葉は間違っていた

殴られずとも精神を破壊されることを知る被虐者の生き残りが、書いて良い言葉ではなかった

運命共同体

私たちは、互いを許し合いもせずに、あろうことか競い合ってしまった

見知る人の顔を知らぬ者として挨拶をしないのがこの街のルールで、母さんに教わった「こんにちは」はとうに破って捨てた

もう「あたたかい」の季節も終わりか

気をとられて自販機のボタンを押したら、一度目には出て来ず二百円も取られて暫く固まる

百円の文学も二百円の文学も大して変わらぬのに、金を稼ごうとする精神に人間性を勘定されるから、詩人はいつまでも貧しかった


助けても助けても、この世界の痛みが尽きないから、いつまでも終わらない

家族縁切り身寄り無し認知症進行、その子孤立無縁貯金切り崩し制限時間


テレビで観た口汚く罵る女に母を映して憎悪が沸き出すからしにたくなる

影につきまとわれるのは懲り懲りだ

都会の真ん中で大声を出したら連行された

「詳しいことは署で」

詳しいことなんか聞いちゃくれないくせに

人生に踏み込むまではしないで良い立場のくせに

それならどうか、その法に則ってこの俺をころしてくれないか

独房にでもなんでも入れてくれ

獄歴なら既に二十年じゃきかない

どこにでも入ってやる


夜中あちこちを歩き回った

紙袋にそれ一つ入れて悪者がいたらやってやる

その時の為に

このままじゃ俺こそが悪の根源だな

ニタリ笑う深夜二時


追いかけた女の尻が想像と違っていつかの階段踊り場でいっそ首を吊りたかった

死ねもしない魂の死者はどこへゆけばいい


暴力にあふれる言葉が誰か人様を傷つけるやもと、封じ込めた言葉の数々が俺を殺すから

だからと言って俺は俺を救う為に誰かを脅かして良いのか

俺の詩はどうか、俺の詩はどうか


俺一人生きる為に俺の存在は世界にとってコストパフォーマンスが悪過ぎる

世界に生きる人を傷つけるなら俺がもうやめるべきなのにどうしてどうしてまだ生きてしまうんだ

いつでもしねるようにと持ち歩く薬の消費期限を気にして、お前は一体どうなりたいんだ


翌朝、雀が誰かのうまれたての吐瀉物を啄む

そいつなりの取捨選択があることをこの街は忙し過ぎて気がつけない


すみませんすみません

卑屈さで頭を下げた回数だけ小さくなる


すみませんすみません

今日はどうか、信号機の赤にこのまま何度も止められたい


すみませんすみません

‪すみません、すみません‬