詩:鯨

汚染された水が溢れて、行き場を失って低いところへ

流れていくというよりは落ちて、いく


金持ちが自家用ジェットでやって来て、汚染問題を解決して

プロペラで各地にまき散らされた毒水を散歩中の飼い犬が舐めてしまって、少年は涙するしかなかった

それは下ることはなく、それ程の量もなく、誰にも知られず空へのぼった


子どもを早くから追い出されてしまったものだから大人になっただけで、満を持してのものでなんかなかったから、穴ぼこに溜まる溜まる汚染水はかき出してもかき出しても終わりがなかった

金はないからゴム手袋をしてすくい上げたものをたまたま通りがかった人たちにかけて回ったかけて回った

それは彼も誰も救うことがなく、ただ悪意が撒き散らされるだけの無情


そんならもういっそ全部飲み干してやるからよこせよという人から死んでいく

全部飲み干してやるからよ

全部飲み干してやるからよ

全部飲み干してやるからよ

そういった者たちは地蔵になった

子の居ない人が多かったようだ

赤いよだれかけが掛けられたお菓子が供えられた


それは彼も誰も救うことがなく、ただ悪意が撒き散らされるだけの無情


そんならもういっそ全部飲み干してやるからよこせよという人から死んでいく

全部飲み干してやるからよ

全部飲み干してやるからよ

全部飲み干してやるからよ


悪意と水は下へ下へ流れてゆきます

よだれかけは風雨に外れて、なにかを受け止めます

それでも時間が経つと、お地蔵さんもかたちをやめてしまいます

下へ下へと流れてゆきます

誰かが立ち上がっては真っ先に死んでゆきます

またお地蔵さんはかたちを得て、それを見つめています

下へ下へと流れてゆきます

先輩から後輩へ

親から子へ

偉いさんから下っ端へ

強いから弱いへ

悪意から善意へ

うえからしたへ


全部飲み干してやるからよ

全部飲み干してやるからよ

全部飲み干してやるからよ


お地蔵さんはそれを見つめています


わたしはそれを書くだけです

全部吐き出してしまわないように、せめて、書くだけです

飲むように、書くだけです