し、せかい、し

世界が明るくなって来た

ほんとうに、世界が明るくなって来た

暗いから少し明るいところに逃げて来たのに

ここも明るくなって来たから何だかムズムズとして

言葉に出来ず

それでも、何となくもう居る場所ではないのかなと思わされた

でも、ここを出て行くとこあるの?

無言

でも、ここではないなと思われたから身支度を整える

必要最大限の物を詰め込みたい想いをグッとこらえて、最低限の物を詰め込んでいる

本当はもう10分前には整ったんだ

その後の10分は僕のこの震えが生み出したものだ

こんな場所でもすっかり居着いちゃったから愛おしくて怖くなった、新しいところへ向かうこと

地面に染み付いた明滅跡

動物の骨、野菜の切れ端なんかが両端の壁の近くに転がっている

もっと掃除したらよかったな、そういうトイレ

右手中指の火傷痕

入口付近で飛べなくなっていた小鳥を見つけた、そのお墓

みんな、僕はもう行かなきゃならないんだよ

僕はもう、行かなきゃならないはずなんだ

愛おしいこの場所に最期の挨拶をして


火をつけた


自らに振り返らないことを約束して走った

いつもいつも振り返る人生だった

あの子との別れのときも

振り返りいつまでも見送ってしまう僕は、弱い人間だと思っていた

それを恥じた

恥じた後、僅か数秒でも長く見つめていたいこの気持ちに感謝した

いつも振り返らなかったあの子の弱さと気丈であろうとしたその強さを想いながら、心の中であの場所が燃え尽きていくのを浮かべていた

次はどこへゆこうか

次はどこへゆこうか

とにかく雨宿りの場所から探そうか


おかしいな、暗いから少し明るいあの場所に逃げ込んだのに

もっと明るくなったら今度はまた旅立つなんて、想像もしなかった

想像もしなかった