まきびし平らげた

圧倒的に忘れ去られる覚悟も勇気もないから
君は今日も寂しいんだ
悔しいんだ
悲しいんだ
もっと去られろ
もっと忘れられろ
誰にも覚えていてもらえないくらいに
現次元も超えて
自分で自分を忘失するくらいに
水が低いところに流れる
腹をすかした餓鬼が気づかぬうちに餓鬼になる
殴った拳の痛みを説いた親父が眠るころ、幽霊部員が密かに席だけ抜いて幽霊になった
トロピカルという言葉が嫌いな青年がワイキキビーチで恋に落ちるころ、コンピューターをハンマーでかち割った男がガラスの上で眠りについた
キモいって言葉をはじめに使ったギャルに孫が生まれたけれど
子どもは子育てをしなかった
今こそ使うべきときという声が聴こえたのに、もうギャルはギャルじゃなくなっていたことに気がついた
震えながらお湯につかった幸せを共有する相手がいなくなった女性が湯気とため息に隠される頃、風俗店を出た男は風邪をうつされたのかなと考えていた
金輪際って言葉を一度使ってみたかった教師はその前に休職をした
信じていたミュージシャンはドバイに移り住んで、財産をひみつ銀行にうつしたと聞いた
空き缶を蹴ったら小指が折れた日の夜眠りにつく頃、見上げた天井の染みはばあちゃんの笑顔みたいだった
愛してるという言葉が嫌いな人間がその最期にはちょっと信じられたよという漫画や映画、音楽や詩が何度も何度も懲りずに作られた
この世界中のラブレターはいつか君に届くのか
そのとき君は生きているのか
その前に僕はふさわしいのか
宇宙スピードでスイングバイしたら君も僕ももう手を繋いだことも忘れて、一層の事はじめましてから始められないだろうか
それが無理なら、せめてあなたと受精卵に入るまでだけのリレーがしたい
勝ちと負けもはっきりとした一昔前のリレーがしたい
残酷なリレーがしたい
一位の旗もとにはもちろんあなたが笑っていて、僕はもうずっとどっか遠くで笑顔なんて概念も知らない存在で、あなたの匂いだけ覚えて笑うかたちになっているんだろう

こんな世界大嫌いだと叫ぶ君が
初めての日の翌朝、見送るその人の姿に愛を知る頃
どっかの国の誰かにミサイルがぶっ刺さって
もう文字にするだけで涙が出そうだと考えた男が車内で都合よく出ない涙にも自分にも嫌気がさす頃
早く恋人に会いたいと
もう詩なんて
どうだっていいと
そんな酷い言葉で締めくくって
また明日には詩を書くかも知れない人生に悪戯っぽく笑って
あらゆること、もの、ひとに
本当はどうかどうか、許されたかったってことは
とても言えないな